2010/08/30

パリでの夏休み 二日目

 「パリと言えばエッフェル塔」
もう、旅行前から子どもたちは何かの宣伝カーみたいに、そればっかり言っていたもので、親バカなJPは、いつの間にかちゃんとインターネットでエッフェル塔のチケットを買っていた。わたしは「あ〜ア」と思った。じつは。
 エッフェル塔は、夜、遠くから見るのが美しい。金色に輝くエッフェル塔が、パリのエッフェル塔のイメージなのだ。子どもたちにとっては。




 真っ白い歯のハンサムな紳士フィリップさんが、朝食を出してくれながら、パリにはバトー・ムーシュと呼ばれる観光船のほかに、ガイドアナウンスもなく、一方通行だけど安価なバト−・ビュス(船のバス)っていうのが運航されていると教えてくれた。地元の人はこのような安いルートや、観光客を避ける技や、近道や穴場を知っているものだ。それで、わたしたちは、バトー・ビュスの一日ファミリーチケット、乗り降り自由券を買って、船でエッフェル塔に行くことにした。

 エッフェル塔に着くのが10時を過ぎていたので、すでにものすごい数の人たちが並んでいた。トイレに行きたくなって、トイレに並んでいる間に、ずいぶん時間が過ぎた。JPはインターネットで買ったチケットを持っていたので、あまり長い時間並ぶことなく、思ったよりもずっと早くエレベーターに乗ることができた。前売り券を持っている人だけの優先通路があって、そこを歩きながら、《特別ご優待客》みたいな気分を味わえた。エレベーターでまず二階に上がる。とりあえず上がる。ただ高いだけ。別に感動もなく。とりあえず、エッフェル塔の360度の風景を写真に撮る。
     ナポレオンが眠るアンバリッド

    



三階に上がるために、エレベーターを待たなければならない。並ぶ、並ぶ、ぞろぞろ進む。そして、三階に上がるエレベーターの所にたどり着いたとき、
「このチケットでは三階まで上がれません」
と言われてしまったJP。わたしは「だったらもういいじゃん」と内心思ったのだけど、子どもたちが夢見たエッフェル塔の最上階だったので、プライドが許さない。わたしたちはエレベーターの脇で待ちに待った。もうこのままこの人ごみの中で、JPには再会できないんじゃないだろうかと思うぐらい人が多かった。外国語が飛びかっていて、風は吹き荒れていて、人は叫び合っていて、みんな疲れていて、みんなよそ者でどこか心細そうだ。
 JPが新しいチケットを買い直して、エレベーターの入り口にたどりつく。三階に上がる。ただ高いだけ。建物が見えるだけ。道路が並んでるだけ。山も谷もない。わたし、完璧にシラケております。熱心なのはノエミ。

       オルセー美術館やルーブル美術館が見えてる。



        凱旋門(がいせんもん)


 ところで、ゾエはうちの母に似ている。どこかに行くと、まずトイレを探し求める。エッフェル塔の最上階でトイレを探す、ゾエ。あるわけないじゃんと思ったら、あった、あった。公衆電話のボックスみたいな、痩せてないと窮屈というようなトイレがあった。みんな「あるわけないじゃん」と思うらしく、ここのトイレには、行列というものがなかった。地上で何十分もかけてトイレに並んだわたしは、馬鹿みたい。ゾエのおかげで、エッフェル塔の最上階でも、トイレに入ってしまったダニエル家のみんな。エレベーターを下りるとき、ノエミが、鉄骨の間を走るパイプを指さしながら、「ふふふ、このパイプを、急速度で流れ行くのは。。。?」とほくそ微笑んでいた。



 エッフェル塔の真下で写真を撮っていたら、ノエミが、「そこだったら三十センチぐらい真ん中から外れてる」とか言ってうるさい。ちょっと離れた所から写真を撮っていたら、ノエミが脇に来て、「最上階って言っても、最上階じゃないよね、てっぺんにはアンテナがあって、アンテナの所までは行けないんだからさ。」と。。。「娘たちに《最上階》の夢を叶えさせてやるんだ」と命を張った父JPを、真っ向からがっかりさせるノエミ。エッフェル塔の周りで売られているお土産物にもケチを付けている。そのかわり、どこに行っても何を見てもかなり熱心。楽しんでないようで、じつはものすごく楽しんでいるらしい。






 バトー・ビュスでノートルダム寺院に行こうと思ったら、一方通行なので、グルうっと廻らなければならなかった。バトー・ビュスはけっこう時間が掛かった。しかもノートルダム寺院でも、トイレに並んでいるものすごい行列にあった。もうほんとうにどうしようかと思った。みんなイライラしてて怖かった。これが食べ物をもらう配給の行列だったら、凄まじい争いになるんだろうか。。。など想像した。トイレ行列のあと、ノエミはどうしてもノートルダム寺院に入るのだと言い、一人で並んで、一人で寺院を一周して出口にあるシャールマーニュの馬のしっぽの所で、本を読みながら待っていた。
 わたしたちは、セーヌ川のほとりに出ている本屋さんをのぞき、ゾエが希望していたので、お土産屋さんで金色のエッフェル塔を買った。自分のおこづかいだったので、机に飾る金のエッフェル塔のほかに、かばんにぶら下げる銀色のエッフェル塔と、学校で見せびらかすための、文字盤にエッフェル塔の絵が描かれた腕時計を買っていた。ずいぶん奮発。JPはmade in china 商品に反発している人間なので、ゾエのために気持ちを抑えているらしい。ゾエのエッフェル塔の夢がまだまだ続くように、命かけてる父JP。

      ノートルダム寺院



   セーヌ川河畔の本屋さん、絵画も売ってる

      

 夕方はモンパルナスのサクレクール寺院に行った。ゾエは寺院の前で踊るカスタネット・ナポレオンに一目惚れし、そこを動こうとしないので、ノエミとJPのみ、サクレクール寺院の最上階に上っていった。普段エネルギー消費、とくに体内エネルギー消費には断固反対しているノエミが、一体どうしちゃったんでしょーというような快気。JPによると、「パパよりわたしの方が若くて元気」と言って、駆け上がったらしい。いつもパパと張り合ってるノエミ。


         カスタネットで踊るナポレオン(まさか〜?)



         サクレクール寺院。高い丘の上にある。



 帰りはバスでフィリップさんちまで。ノエミとJPの足の裏に指圧を施してあげたわたしであった。

長い一日だったなあ〜。

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