2009/11/19

409



 JPが死ぬほど苦しんでる姿は滅多に見れるものじゃない。暑い、寒い、痛い、かゆいの単語は知らないんじゃないかとずっと思っていたぐらいだ。病院に入院してるんだから、「痛い」ぐらい言ってもいいと思っていたが、全然言わない。この人ほんとうに大丈夫だろうかっていってる間に、新しい旅立ちの朝が来た。

 409号室には、人が出入りする。
手術の翌日の朝一番に、キネが来た。キネというのはキネジテラプートKINESITHERAPEUTEという難しい単語で、辞書で日本語を探したがやっぱり難しい名前の職業(運動療法の施術者)だったので、キネと呼ぼう。
 キネが来て、手術前にあった右足の麻痺を確認した。麻痺はほとんどなくなっていてびっくりした。そして、いきなり立ってくださいと言った。きれいな助手がくっついて来ていたもので、
「あんた、そのパジャマでスッ転んだら、丸見えよ」
と胸の中で言いながら、JPを応援した。
キネはまず、どうやったら腰に負担をかけずに身体を動かすことができるかを説明した。そして、横向きの態勢からJPを起き上がらせてくれたのだが、ここでいきなりJPが
「頭がふらふらする」
と言った。目が回っている感じだったけど、キネは、それは当然だと言って静かにしてればよくなるからと、そのまま静かに待ってくれた。
 そのあとJPは、立ち上がり、部屋の中を歩かされた。シャワーを浴びてもいいと言われて、いきなりシャワー室に連れて行かれた。椅子のついているシャワーなので、JPは身体を拭いた。

 お昼にはちゃんと病院の食堂から普通の食事が来て、JPは起き上がってベッドの上でご飯を食べた。わたしは病院の隣にあるスーパーで、ありとあらゆる贅沢インスタント食品を買い集めてきていた。反インスタント食品派のJPにじろじろ見られながら元気に食べた。こんなことでもない限り、インスタント食品をJPの目の前で食べることなどできないので、見せびらかして食べる。わたしはいつでも食欲だけはあるのだ。病人を前にしても、ちゃんと遠慮できないのだ。そしていつも
「気持ちよいほど食欲旺盛だねえ〜」
と言われるのだ。そうですよ。ご飯がおいしいのは健康の証。
早くお家に帰って、おいしいものをがんがん食べよう!

 JPの両親が来た。会話ネタが乏しいので、早く帰ってくれるかと思っていたら、なかなか帰らないので、わたしも帰れない。そうこうしているうちに、手術をしてくれた先生が来たので、いろいろとお話を聞いて、安心して両親は帰った。
看護士さんたちが入れ替わり立ち替わり、痛み止めの点滴を取り替えにくる。傷の点検と血圧の検査にも来る。小さなパソコンを抱えた人が、明日のメニューを伝えにくる。デザートを二つの中から一つ選ばなければならず、JPは、「どうしてもその二つしか選べないんですか」などと言って、パソコンを抱えた女性を困らせる。
 JPもゆっくり寝た方がいいので、わたしもカーモーに帰ることにした。

 ノエミは学校から帰って来て、宿題もヴァイオリンの練習もちゃんとして待っていた。ゾエは友達のお母さんが学校まで迎えに行ってくれていたので、友達の家に迎えに行った。夕食の時間にずいぶん遅れてしまったので、ピザを買いに行くつもりだったのだけど、友達のお母さんがホットサンドイッチをくれた。サンドイッチでは足りなかったけど、ピザを買いに行く気がなくなったので、足りない分はカップラーメンでごまかした。

 サンドイッチとラーメンなんて。。。寂しいなあ〜。

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