2008/08/13

ペルセウス流星群の夜

 ペルセウス流星群の夜。空には、何千、何万、何億もの星が、キラキラと輝いていた。
北極にカシオペア座、さそり座。。。。。。他にもまだまだたくさんの星が輝いていた。
 その夜、高三の姉は、高校の物理・科学部天文班とかいうクラブのみんなと、宮ケ浜まで、ペルセウス流星群の、観察に出かけた。高一の姉は、看護婦の勉強をしているのだが、その夜は、病院の当直日で、とまりこんでいた。−−というわけで、わたしは、広い勉強部屋にたった一人で寝ることになった。
 さて、この勉強部屋、みてくれは小さいようだが、奥はすごく広いのだ。そのうえ、ボロなので、不気味さを、ただよわせている。
 おねえさんの本で、いくらたのんでも見せてもらえない本がある。今ぞとばかりに、その本を引っぱりだして読んだ。最初は、その分厚い本のおかげでこわくなかったのだが、ありったけ読んでしまうと、この世にわたしだけしか存在しないように思えて、背すじがぞーっとして来た。マンガを読み直していると、おばけの出て来る話などがあったり、ラジオをかけると、ボソボソと知らない歌が流れてくる。わたしは、よけい、こわくなってしまった。
 わたしの家は母屋が狭いので勉強部屋ーーつまり、わたしの今いる部屋は、母屋とは別の棟にあるのだ。だから、この家にわたし一人。不安だ。
 そこで私は、家に持ち込んでおいた竹刀を、左手でしっかりとにぎりしめている。こわさのあまり、体も自然に、ブルブルと震える。
「はやく寝てしまいたい。でも、流星は見たい。」
私の頭の中は混乱している。一時ぐらいまで起きていないと、生まれてから一度も見たことのない流星というものを見ることはできない。
 一時まであと三十分程度だ。今、外に出たとしても、見ることはできるはずだ。
でもやっぱりこわい。
さて、一時。早く見て早く寝よう。−−そう思うのだが、体が言うことをきかない。そうこうしているうちに、父が魚つりから帰って来たらしい。車の音だ。
「お父さんは、外の洗い場で水浴びをする。その間に星を見よう。」
車の音を合図に、私は竹刀を持って外へ出た。
 父は、外にいる私に気付いたらしく、家に入っていって、母になにやら言っている。
母はすぐに出て来て、私といっしょに、空を見上げてくれた。
「なかなか出ないねェ。」
などという会話を交わしながら、空から目をはなすことなく見ている。
その時突然、
「あっ。」
母の叫び声。
「今、向こうの方にサーッと光ったでしょ。」
母はどうやら、みつけたらしい。
「わからなかったな。」
「どこみてるのよ。」
別に、空から目をはなしたわけでもないのだが、流れる瞬間を見ていなかったらしい。
二、三度、こんな会話を交わしたが、一時半、
「もう、そろそろ寝たら。」
と、母の声。
「二時ごろが一番たくさん流れるって言ってたから、そのころ、また見たらいいよ。」
でも、あきらめて寝ることにした。
 次に目が覚めたのは、朝だった。結局、ゆうべの三十分しか、見るチャンスはなかったということになるが、母は五個もみつけたのに、私は0個。
百年に一度のペルセウス流星群を見逃してしまったのだ。
これで、私は一生、流星を見ることは、ないかもしれない。
 ペルセウス流星群の夜、スリルとこわさをたっぷり味わい、百年に一度ーーいや、一生に一度かもしれない流星を見逃した。くやしくて、おかしな、記念すべき日になった。

                南指宿中学校 一年一組 遠藤みのり (文集《いぶすき》第28号) 

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