2008/07/12

リシャーの畑

 リシャーは生粋のイギリス人で、カテルはイギリス人とフランス人のハーフ。リシャーの犬は英語しかわからない。2人は、30代後半ぐらいで、この世界ではずいぶん若い自営農家。無農薬野菜を作っている。わらの家を建設中だが、なかなか進まないので、今は農家の横にある、農家とは縁のないカテルの両親の家に居候している。子供が産まれる前は、農家脇の倉庫に住んでいた。そこにはJPが憧れている「水を使わないトイレ」があって、子どもたちはそこで用を足すのを楽しみにしている。
 
 彼らはアマップという全国チェーン(?)の無農薬野菜組合みたいなのに入っていて、私たちはそのグループに年間登録し、定額を払って、季節の野菜を買っている。お金を払っていても、農家に野菜がない時にはもらえないし、野菜が余るほどある時には、食べきれないほどもらえる。去年の夏は冷夏だった。それに続く冬と、腐ったような春のせいで、4ヶ月ぐらい野菜がもらえなかった。それでも文句を言う人はいない。払ったお金はリシャーの損害賠償になるし、農場が動かない間、機械類の整備費に使われる。朝市やスーパーでは手に入らない古代品種の野菜や、外国から入って来た野菜なども、頼めば作ってもらえる。

 会員は、自分用のニワトリを農場で飼ってもらって、卵をもらうこともできる。また、草むしりや、ビニールハウスの設置、その他、リシャーが一人では大変な時には、いつでも手伝いに行くことになっている。そういう時、うちでは、子連れで行って、子供にも畑仕事をさせている。自分で植えて草をむしったニンジンは、大喜びで食べるし、食卓でぐずる時には、リシャーが炎天下で働いている姿や、カテルが雨に打たれている様子を思い出させる。

 今週の収穫は、
葉っぱつきの新ニンジン 1キロ(葉っぱはスープの具か、近所のロバのエサになる。細くて長いニンジンは、皮も剥かずに生でガリガリ食べると、馬のように幸せになれる)
パティソンという古代品種のカボチャ 1個
クルジェット 2本
キュウリ 2本
レタス 1玉
葉っぱつきのベトラブ(葉っぱはほうれん草と同じように使う。ベトラブは砂糖大根と呼ばれるもので、真っ赤で甘い大根。生をすりおろしてサラダにしたり、茹でてキューブにしてサラダ。など)
その他、その辺に生えてた草(ハーブと呼ぶ?食べられるものだけリシャーが選別してくれる)
卵1箱6個入り

 1ヶ月に1回、会員が農場に集まって、交流を深めるためのピクニックが開かれる。ただし外での食事が可能な季節のみ。

わたしは、農場の野菜を使ったベジタリアン巻きずしと、ベジタリアン生春巻きと、桜餅を作った。
桜餅は食紅の代わりに、ベトラブの真っ赤な汁を薄めて使った。麦茶も持って行った。
大好評だった。

 リシャーが、手作りワインを出してくる。

「今晩雨の予報だったので、朝から畑を耕して、長ネギを植える準備をした」
とリシャーが空を見上げている。
リシャーの家のプール(ただの池で、魚も泳いでいるが、家族はそこで泳ぐ)では、カエルの合唱が始まる。
風が吹き、ハエがいなくなる。
女たちが食器を片付け、男たちはテーブルと椅子を片付けた。

 別れる前に、また立ち話が続く。
途中で拾って乗せたメンバーを、彼女の自宅前で降ろし、しばらく続く暗い農道を進んでいると、刈り取られた牧草の広大な畑の向こうに、今は光を落とした、見渡す限りのひまわり畑の向こうに、稲光が見え始めた。
 住宅街に入り、我が家まで100メートルという所で、大雨が降り出した。

 長ネギが天に伸びる夢を見た。



 

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