2008/03/13

2月13日 バレンタイン前夜

 バレンタイン前日だから、最後の修羅場を見に行けるかと思ったら、人生観を変えてしまった《あー》さんの新企画により「フリー」の日が設けられた。《あー》さんは本日も「金に糸目をつけるにゃ」との指示をうけているらしく、なななんと、丸1日プロの運転手を雇っていた。前日に「すごい運転手を雇いました」と言っていたので、《あー》さんのギャグで、きっと彼自身が、ご自分のホンダ(タクシーのおじさんよりもすごいカーナビ付き)に、白手袋で来るのかにゃ?と思っていた。
 そうしたら、冗談抜きで、白手袋に帽子まで頭に載せた、正真正銘のお抱え運転手さんであった〜〜。

 開けられたドアを先に入るのは、大統領のミーさんではなく、いつも、付き人のわたし。
それを見て、日本男児たちは、目を丸くし「ミーさんどうぞ」と嫌味にもワタシに向かって言う。
それでも、タクシーに乗る時には、まず、わたしから乗らねばならない。

 夏に帰国した時、いきなり日本人化してしまったわたしは、ミーさんの3歩後ろを歩き、タクシーに乗る時もエレベーターの前でも、まずミーさんに譲っていた。「どうぞ」という滑らかな手の合図まで添えて。
そうしたら、2日目の朝にミーさんがキレた。

 「あー、もー、やめてくれっ!エレベーターには先に乗れって言ってるだろー。オトコの親切を無駄にしちゃあイケナイ。それに、タクシーの奥に乗るには、身体を折り曲げなきゃならないから、俺には苦痛なんだよ。あんたはチビなんだから、奥でも平気だろう。おっとそれから、後ろを歩くのだけはやめてくれ、観察されてるみたいで、ムズムズするんだっ」
 「キレた」という顔で振り向かれた時から、言われることぐらい想像できたので、わたしはいたって冷静。
「でも、ミーさんだって、後ろからジロジロ見てるじゃないですか、
モモのあたり」
「ぐっ」
と、いうわけで、この日から、わたしはせっせとミーさんにドアを勧められた。レディーファーストを装ってるけど、本当は身体を折り曲げたくないミーさんのせいで、日本男児たちから白い目で見られるのは、わたし。「さすがフランス人男性はマナーが素晴らしいですね」と褒められるのは、ミーさん。けっきょく、たびたび後ろを振り向きながら「今お尻見てなかったでしょーねっ?」と、いちいち言うのが面倒くさくなったので、ミーさんとはまるで商売敵のように、並んで歩くことにした。
 
 本日、ミーさんの予定。
(以下、都合により大幅に略しました)

 わたしがトトロのぬいぐるみを恨めしそうに見ていると、《ミーさん》から「それを二個持っておいで」と言われた。それをバラの包みでくるんでもらったあと、《ミー》さんはおもむろにサインペンを出し、「ノエミへ」「ゾエへ」と書き、慣れた手つきでメッセージとサインまでしてくれた。
「おうちでお利口さんに留守番してるからね。こんな包みで悪いけど」
いや、ほんと。あそこの店員さんは、ぬいぐるみもろくに包めなかった。

 ルレ・デセールの寺井さん(下落合)と、かつて指導した弟子の橋本望さん(世田谷・ミラベル)のお店に行く。
そして銀座の時計屋さんへ。娘さんが日本風のスウォッチを買って来てと頼んだそうなので(例えば文字盤が漢字とかの)。『ブレゲ』や『オメガ』などの時計屋さんがいっぱい入っている14階建てのビルで、一階の専用エレベーターに乗ると、お店に直通という。。。こんなんフランスにはないなあ〜。こんな時計屋さんに入るには、上から下までかっこ良くキメて、すでにすごい時計をはめてるか、《息をしてるだけで素敵と言われるフランス国籍のオトコ》でも連れていない限り、一生足を踏み入れることはないだろう。東京ってエ所には、「庶民」はいないんだろーか。《あー》さんは昔取った杵柄で、店員さんの代わりに《ミー》さんのパッケージを手際よく包んだ。おそらく時間が気になっていたのだろう。

 お昼はワイン・ビストロ《ル・プレヴェール Le pre verre》(神宮前五丁目)に連れて行ってもらった。フランスのビストロで食べているような雰囲気、おいしい食事のできるところ。ワインも、エスプレッソのコーヒーも本物だった。気軽に仏蘭西料理を楽しみたい人には、行ってもらいたいお店。にぎやかでマナーなんぞは気にしなくてもOK。《ミー》さんもご満悦のようだった。
 ここのビストロは、アルビのそばでワインを作っているプラジョルさんの紹介で予約してもらっていた。プラジョルさんは代々エリゼ宮にワインを卸していた方で、《ムスカデル》という白ワインはみちこ皇后の大のお気に入り。ワインに弱いわたしでも、この《ムスカデル》ならばいくらでも飲める。(でも日本では売ってない)
 

 夕食の前には、恒例となった《浅草》で、フランス人が喜びそうなものをいろいろ買った。夏に七福神の7分の2を買っていたミーさんは、同じ店を探し当てて、夏とは異なる7分の2を買っていた。

 ホテルに戻るまでに、タクシーのトランクの中は、紙袋でいっぱいになった。橋本さんの奥さまに、花束までもらってしまった。どうしたらいいんだ?
 運転手さんは、車が止まると風のように車を降りてドアを開けてくれ、目的地に一番近いところで私たちを降ろし、そこがどんな場所でもどこかに車を停めて待っていてくれた。時間通りに建物の前に迎えに来てくれ、またドアを開けては優しく閉めてくれた。言葉遣いは洗練された、美しい敬語ながらも、仰々しすぎない。
「運転手さん」という職業があることは知っていたけれども、こんなに気を遣い、頭を遣い、時間に正確で、町や道路を知り尽くしていて、そして、こんなに運転が上手とは、知らなかった。カーナビがあれば運転手をやれるってわけじゃないんだ。

 ホテルに荷物を置いて、いざ夕食。
(中略)

 無事終了。スーツケースをまとめなければ〜〜〜。花束どうしよう〜。

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