2008/03/04

2月10日 名古屋2日目

 「日本に帰った」
と言うと、誰もが「バカンスはどうだったか?」と言う。
ミーさんもほぼ同じことを言っていた。
「日本に行った、と言うと、みんなにバカンスはどうだったか?と訊かれるので、今度そういうヤツが目の前に現れたら、ぶん殴ってやる」
過激だなあ〜。
ついでにミーさんは言う。
「京都で見たのは、駅と百貨店と料亭だけ。」
「大阪の百貨店には行ったけど、大阪には行かなかった。」
京都と大阪に行って、金閣寺も大阪城も見てないガイジンは、ミーさんぐらいなもんだろう。でも、その料亭に行けたんだからいいじゃん。(中略)美しいおかみさんに「おこしやす」と言われました。
と、言えば、また
「いいよねえ〜。そんなおいしい仕事ができて〜。代わりた〜い」
と言われるだろう。
そうしてミーさんにぶっ飛ばされればヨロシイのである。ふむ

(お仕事の件につき省略)

 大阪の仕事先には、高校時代の友人である脇田君とジミーが会いに来てくれ、人が集まり始める前に、ミーさんとわたしと4人で記念撮影までしちゃった。奈良の従姉(今は大阪に住んでる方)も、ダンナさんといっしょに来てくれていた。チョコレートの袋をぶら下げていた。

(省略)

 ミーさんのチョコレートは、とんでもない値段がついていたのだが、大阪のお店では、瞬く間に売り切れてしまった。
「もう2回目です、3回目です」
というリピーターのお客様が目につく。
 ミーさんは、フランスでの自分のチョコレートの評判には、大きな自信を持っているが、フランス人に好かれているチョコレートでも、日本人の口に合うのだろうかと、とても心配していた。けれども、訪れるリピーターの方々が、口を揃えて熱く語る感想は、
 「まろやかでしつこくない。甘過ぎないのがいい。いくらでも食べられそう。デザインがシンプルでおしゃれ。中に入っているガナッシュやプラリネと、外回りの薄いコーティング・チョコの、ふたつの風味がほのかに混じり合って、調和がとれている。」
などなど、フランスのお得意さんたちとまったく同じ感想だった。ミーさんは、自分のチョコレートを《日本人風味》にしなくてよいのだと確信してくれただろう。
 フランスの箱と、日本の箱は、かなりデザインが異なっているけれども、日本で売られた箱は、日本人の好みにもマッチしていたようだ。みなさん「かわいい」とか「素敵」と言ってくださった。
 「義理チョコはゴディヴァ。本命はこっち」とか、「このチョコレートは誰にもあげない」というお客様あり、なんとも頼もしい。もうファン・クラブができつつあるじゃあないのっ。

 ミーさんは、「売り上げを上げるために、店先に立ち、ニコニコして、客引きをやるのはごめんだ!」と嫌がっていたのに、客を引かなくても客はやって来るし、みんなが素晴らしい感想を述べてくれるし、お客様は店先で押し合うこともなく礼儀正しい。「アイ・ラブ・ユー」とささやくフィリピン出身の美しい女性まで出現。ミーさんが、両手に包むように差し伸べる握手の手に触れると、「なんて柔らかい手なのかしら?本当にこれが職人さんの手?」と言って、ミーさんの手を離したがらないお客様もいらした。
 手を握られたことがなかったのでわからなかったが、ミーさんの手は、本当に白くて柔らかそうで、実に、おいしそうなマシュマロみたい。テレビ撮影の時に、チョコレートの製作を見せていただいたが、本当に力強く、実に優しい動作で、チョコレート一粒ずつに、魂を吹き込んでいるようだった。人形創作家が、目玉を入れて完成させるお人形のように、フォークみたいな小さな道具で、ちょこんと二本線を入れて完成した、輝くようなチョコレートを思い出す。撮影のあと見本で作ったチョコ約5キロを戴いたことも思い出す。

 チョコレートの箱を開ける瞬間の、かすかに広がるチョコレートの香りを感じてくれるだろうか。キラキラ輝く表面と、そこに記された、チョコレートたちの名前ともいえるシンボルマークの、手で描かれた小さなゆがみをちゃんと見てくれるだろうか?チョコレートは小さいけれども、どうか丸呑みしないで欲しい。ガナッシュよりもコーティングの部分の量が多い角のところをちょっとかじって、そこのビターな感じを味わえただろうか?もう少し奥を噛めば、薄いコーティングよりも、ガナッシュの風味のほうを強く感じられるだろう。最後のひとかけらをお口に入れた時に、コーティングと中のガナッシュが、調和よく混ざり合って、舌の上で踊るのを、楽しめただろうか。ミーさんのチョコレートは、ミルクよりもブラックで味わった方が、本当のよさを理解してもらえると思う。これはわたしの意見。

 のぞみと、ひかりとタクシーにお世話になり、たくさん歩いて、今度はひかりとタクシーと、のぞみを乗り継いで、名古屋に戻って来た。雪はすっかり溶けていた。名古屋駅で、京都方面から来た新幹線のタイヤを掃除する、不思議な軍団を見たっ!彼らはホームの下のトンネルの中に潜んでいて、新幹線が到着すると、一斉に穴から飛び出す。そして、次の出発までの数分の間に、山を越えて来たために汚たタイヤを、ピカピカに磨き上げる。ミーさんは、ホームでぴしゃりと線の前に停まる新幹線のドアと、並ぶべき所にちゃんと列を作ってお行儀よく並んでいる日本人たちに、熱い視線を送っている。何度見ても新鮮な光景だ。

 さあ、今晩は、名古屋で最もおいしい焼き鳥だっ!行くぞお〜。

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