2008/01/19

霧が生まれた

 JPがごそごそやっているので、目が覚めた。
「何時?」と訊くと、「7時半だよ」って。。。そんな。。。アンタ。。普通に「7時半だよ」だなんて言うもんじゃあありませんよっ。わたしは今日は6時に起きる予定だったのにい〜〜。
6時に起きて、ちゃんと朝ご飯を食べて、7時半にはとっくに家を出ておかねば、トゥールーズの空港に8時40分に着くことなんて無理なのだあ。レンタカーをゆうべのうちに借りておいてよかった〜〜。
 化粧もせずに、頭はぼさぼさ。「空港でお待ちしております」と言ったのに。なんてこったい。

 JPがマイペースでコーヒーをいれてくれている間に、いちおう着替える。靴下を用意してなかったよお〜〜ん。ええ〜〜ん。

こんなに口に出して「どうしよう」を連発したのは、数年ぶりだ。
レンタカーに飛び乗って、空港へ。
しかし、なんとしたことか、カーモーからトゥールーズまで、ずっと切れ間なくものすごい霧だった。
深い霧の中を時速150キロでぶっ飛ばした。
「こんな霧だったら、どうせ飛行機の到着は遅れてるにきまってるさ」
などとつぶやきつつ、トラックの列を追い越しながら、「わたしは今日死ぬかもしれない」と思った。
手に汗握って、心臓は爆発寸前。

 10分遅れで空港に到着すると、飛行機もほんのちょっと遅れていた。
出口で待っていたのに、いくら待っても日本人らしき二人が出て来ない。
そこにいた人に訊いたら、やっぱり「パリからですよ」と言っているし、これのはずなんだけど、どうしちゃったんだろう??
出て来るグループが、「ドイツから」に変わったので、パリからの乗客を諦めて、空港内をさまよった。
 
 何やら怪しげな日本人が、玄関近くのベンチにうずくまっている。
一人はビジネスマン風で、予想通りの日本人スタイルながらも、インドネシア人のように顔が真っ黒。
一人は、予想をはるかに超えた若者。その辺のゲームセンターから出て来た風な軽い足元に、ボアのついたジャンパーを着ている。
真っ黒に焼けているのは、波乗りが得意な《なーさん》で、もう一人のジャンパー青年はとし若き有能ディレクターの《きーさん》であった。わたしの方は「背が低くて丸っこい40のおばさんです」と言ってあったので、すぐにわかったようだった。

 「お待たせして申しわけありません。あっちでずっと待っていたんです」(「ずっと」の辺りがウソっぽい。)
「外国人だからこっちから出て来たんですよ」「トイレ行ったりしてたから。。。あまり待ちませんでした」

 そういえば《きーさん》は「霧」のつく名前だ。そうか、この人が霧を運んで来たんだな。。。。
トゥールーズからアルビへの田舎の風景をあちこち堪能していただこうと思ったのに、霧が深くて本当に残念だった。

《ミーさん》のチョコレート屋さんに一番近い駐車場に到着。今回は、普段自分で運転している自家用車よりも小さい車だったので、地下駐車場もすんなり。昨日わわざわざ予行演習した甲斐があったというもの。念のため駐車場からチョコレート屋さんの《ミーさん》に電話してみる。
 「日本からのお客様ご到着しました。今からお店に伺います。」
 「ええ?今日だったの?今から来るの?ええ〜〜!?」
《ミーさん》が焦ってる。わたしは絶句してる。
「今どこにいるんですか?」
「う。。。まあ、お店に行っといてください。走ってそっちに向かうから」

 わたしは、心の中で《ミーさん》をなじりながら、できるだけゆっくり地下パーキングを突っ切り、広場を突っ切り、できるだけゆっくりお店の扉を開け、できるだけのんびり奥さまと視線を交わし、「どうぞ、お店を一周してください」とお客様に頼んでる隙に、奥さまと二人で「ミーさんはどこに?」の電話を掛けまくった。チョコレート屋さんは40平方メートルしかないので、一周するまでもなく、玄関に立っているだけで、すべてを見ることができる。ご主人がいらっしゃるまで、ちょっとチョコレートの試食をしていただきましょうということになり、わたしたちはまたチョコレートの試食に励んだ。

 何ごともなかったかのように《ミーさん》が現れ、わたしは「大変お忙しい方なので。。。」とかなんとか誤摩化し、隙を見て奥さまが奥の部屋で《ミーさん》を叱りつけ、《ミーさん》はわたしにウインクさえすりゃあ、どーにでもなると思っているようだった。
このオトシマエはつけてもらいますぜ。カメラマンは火曜日に来るので、その前にちょっとチョコレートのアトリエを見学していただくことになった。そして、12時半まで《ミーさん》と奥さまは丁寧に応対してくださって、お昼にお別れした。
 別れる時に、《ミーさん》自ら「オトシマエ」のチョコレートをいただいた。

 《なーさん》と《きーさん》はわたしにも日本からのお土産をくださった。《なーさん》は飛行機の中で食べた鶏肉かエビにあたったらしく、お腹をこわしていて具合が悪そう。薬局で下痢止めの薬などを買って、ずっとホテルで休んでいただいた。わたしと《キーさん》はいっしょにお昼を食べ、午後はアルビ市内観光をした。
 夜は、《ミーさん》の共同経営しているひとつ星のレストランに三人で予約してあるので、《きーさん》にお願いして、病気の《なーさん》の代わりにすみちゃんを招待してもらうことにした。《ミーさん》のケーキ屋さんで修行中の、すみちゃんだから、チョコレートのことや《ミーさん》の天才ぶりについて、すみちゃんから面白い話が聴けると思ったのだ。すみちゃんは、レストランに行く前に、ホテルで寝ている《なーさん》のために、うどんを作ってくれた。《きーさん》とすみちゃんは歳も同じぐらいだから、意気投合して、3人でとても楽しい土曜日の夜を過ごせた。《なーさん》が《ミーさん》のレストランに行けないのは、本当に残念だった。

 《きーさん》はとっても小食で、そのうえ、日本出発前に忙しくて3日ぐらい寝てないらしく、レストランでもほとんど食べずに、食事時もお皿に鼻を突っ込まんばかりにうとうとしている。すみちゃんは、平気でチーズもデザートも食べた。さすがだ。すみちゃんのマイペースは、《ミーさん》からの直伝なのだろう。

 二人をホテルとアパートに送って、家に帰り着いたのは夜中の12時近くだった。JPは本を読みながら待っていてくれたが、子どもたちはもちろん寝ていた。ゾエが機嫌が悪いというので、《ミーさん》からもらった「オトシマエ」のチョコレートの箱に、「子どもたちへ。ミーさんからプレゼントだよ」「優しい日本のおじちゃんたちも、日本からプレゼント持って来てくれたよ」とメッセージをつけて、JPが用意した朝食のテーブルに置いた。

 台所はきれいに片付けられ、洗濯物は取り込まれていた。廊下には子どもたちが明日着る服がきちんと並べて置かれ、夜も9時ぴったりにはベッドに入ったらしい。夕食のピザはゾエとJPが作り、ノエミはちゃんとヴァイオリンの練習をしたそうだ。
 「ママが居ないと、子どもたちはよく言うことを聞くんだよ」
と、パパが言っている。JPは主夫になる気はないんだろうか?
 わたしは一歩外に出ると、家のことはすっかり忘れている。それにこの頃は携帯電話ってものがあるから便利。けれども、仕事中に家から電話が掛かって来ることはまずない。仕事1日目はいつも「働くオンナも悪くない」と思う。

1日目、無事終了。

 

Aucun commentaire: