2007/12/07

あっ!がんばれ。それっ、そうそう、えらいえらい。

 数週間前から、ちょっと緊張した気持ちで、この日を待っていた。
東京からパリに出張中のある百貨店の某氏が、夏に日本に同行させていただいた、チョコレート職人のミーさんに会いにいらっしゃるとのこと。その日ミーさんはパリに出張。チョコレート屋さんの人たちは総出で大忙し。1年の25%の売り上げを掛けたクリスマス商戦を前に、みんな休みなしで働いているため、空港までのお出迎えとお見送りはわたしにやってもらえないか、と指名された。(わたしだって別にヒマってわけじゃないんですけどお)
 
 「うちのレストランでお昼。みのりさんも、もちろんご招待」
ミーさんはお友だちのコックさんと、ひとつ星のレストランを共同経営している。
「ええ〜、わたしもデスかあ。ミーさんって優しいっ!」と叫ぶわたしに、
「わたしはおまえさんには、いっつも優しいじゃあないか?」
えーえー、そうでしょうとも。

 当日はJPが、パリ出張につき留守のため、子どもたちを朝8時20分から16時30分まで丸1日学校に預け、夕方はいつ帰って来れるかわからないので、モーガンに迎えに行ったあと、夜まで預かってくれるように頼んだ。助かるよ。

 アルビのレンタカー屋さんを9時には出なければ、空港に10時に着くことはできない。
でも、子ども二人を別々な学校に送り、犬の散歩をして餌をやり、そのうえ、家を出る時に乗った自家用車の調子が悪いとあっては焦るしかない。

 車は走り出したものの、大雨の中、ついにワイパーが壊れた。高速道路でいきなり前方が見えなくなってしまった。こんなことでレンタカー屋さんまでたどり着けるんだろーか。ワイパーは2、3回左右に動いた後、いきなり動かなくなる。何度も車を降りて、ワイパーをいじった。
「何キロ先にバス停留所があるからいったん駐車できる」とか、「あそこまで行けたら、だれかに頼めるかも?」などなど頭を働かせようとするものの、焦っているので集中力なし。
 ああ、せっかく化粧までしたのに、雨に濡れてすでにドロドロ。

9時過ぎにやっとレンタカー屋さんに到着。借りたのはルノーの《セニック》
 マニュアル車なんだけど、車内のいろんな仕掛けが自動化されていて、わけわからん。ミラーも窓もいちいち《ジー》という音を立てて勝手に動く。ミラーをちょうどいい角度に調節するのに、5分も費やしてしまった。焦る。
 なんと《カギ》なんてものはなくてカード。スタートボタンひとつで発進。サイドブレーキはナシ。「勝手にブレーキが掛かるから」と言われて安心したものの、ブレーキを解除する方法がナゾで、車が動かず。メーター類は全部デジタルで緑の光が目に痛い。ディーゼル車特有の《ゴロゴロー》という低い音も気にくわん!
 ワイパーを見てると眠くなるわたしは、ワイパーを止めたいんだけど、雨が強くて止めるわけにはいかず。
デジタル電光計と、雨と、ワイパーのせいで、目が痛くなってきた。が、しかし、老眼鏡をコートのポケットに入れてたら、さっき座った瞬間にまっ二つに壊れた。しまったあ〜。
 
 10時5分に空港到着。パリからの便は遅れていて、24分に到着との表示なので、ほっと一息お手洗いへ。
《お掃除中につき、立ち入り禁止》
もうひとつのお手洗いを求めて、空港内を横断した。
なんでトイレが空港の端と端にしかないんだ?
気づいたらもう時間が来ていたので、空港内を走る。
ゆっくり入ってる暇なんてなかったぞ。ぶーぶー

 お客様ご到着。ラフな格好。しかもほぼ手ぶら。
なんだ〜。緊張して化粧してソンした。(でも、もう化粧のけの字も残ってない)
ひとりは夏にも日本でお会いした方だった。なのに、相手にはすっかり忘れられていた。その代わり、会ったこともないもう一人の方には「東京でお会いしましたよね」などと言ってしまい、「いえ、わたしはずっとパリ駐在で」のお返事。どっちもどっち。
 
 アルビには11時半ごろ着いた。パリから帰って来るミーさんを待つ間、チョコレート屋さんの店内と、アトリエ見学。クリスマス準備真っ盛りの、華やかな忙しさの中、もうわたしにはここへ来ると恒例の、お楽しみ《試食会》
「これは、みのりさんは食べたことがないよ」
といって出されたものがあった。今週はまだ非売品なので、秘密。
   はああ〜〜おいしかったあ〜〜〜
チョコレートは精神安定剤。たちまち疲労回復。

 いよいよレストランでお食事の時間。お店からレストランへの移動で、道路と、駐車場の出入り口も間違ってしまい、アルビの町をお客さんづれでうろうろしてしまった。なのに《お客様は神様》お優しい

 お料理はゆっくり出て来るので、デザートまで食べている時間がなくなってしまった。みなさんはワイン通だから、ワインが飲めさえすれば幸せそう。でもわたしはデザートだけが生き甲斐だからショック。
しかもミーさんから「みのりさんは飲んだらだめだよ、運転するんだから」と言われた。
みなさんワインを飲むのが楽しそう。飲み方も、さすが、様になっていた。こんなに上手にかっこ良くワインを飲む日本人はそうはいない。ワインについてのお話も弾んだ。無念だ。仕事のお話は一切ナシ。
 パリ駐在員の方は、空港駐車場での第一声が「マニュアル車を運転できるなんてすごいですね〜」で、こんなわたしにいたく感心してくださっていた。実際には乗り馴れないレンタカーで、わたしが窓の開け閉めに戸惑ったり、たまにエンストしたり、キューブレーキを掛けたり、サイドブレーキの扱いがわからなかったり、料金所で手が届かなかったり、地下駐車場で隣の車すれすれだったり、パーキングで自分の車がどこにあるのか忘れたりするたびに、「大丈夫ですよ」などと励ましてくださった。
 地下駐車場などでは、
「あっ。がんばれえ〜。それ、そこだ。よいしょ。そうそう。。。」
などの遠慮がちなかけ声で、後ろの席からわたしを応援してくださっていた。

 パリの百貨店は、日本人観光客の駆け込み寺となっているそうだ。デパートの受付嬢に「パスポートなくなったんですけどお〜」とか「お金貸してください」とか「医者に連れて行ってください」などと申し出る観光客に、優しい笑顔で応対しているそうだ。偉いなあ。
 ミーさんが「みのりさんの運転は怖くないか」と訊いた時に「目を閉じてます」と正直に応えていらした。怖かったのねえ〜やっぱり。いつもはもっと速く走るんだよお。

 さて、帰り。引き続き大雨。しかも暗くなってしまった。自分の車のワイパーが壊れていることを考えて、自宅にはレンタカーで帰ることにした。
 子どもたちは「ママンが新しい車を買った」と言って、大喜び。
カードをピッと押すと、ライトがきらきらっと光って全部のドアにカギがかかる。ピッと押すと車が「ぴっ」と鳴くのも面白がっている。
 JPがいないので、今日は宴会。なななんと、夕食代わりにピザと、ケチャップたっぷりのフライドポテトと、コーラを買った。こんな夕食は、はじめてだ。「パパには内緒だよ」とゾエが言っている。「空き缶を隠さなきゃ」とノエミが言っている。ついでにノエミは「コーラは科学者が実験を間違ってできた、危ない飲み物」などと言って母の神経を逆撫ですることに成功し、自分は成分表を読みながら、缶入りの甘いお茶を飲んでいた。(ああ苛つく)

 ほとほと疲れた。「今日も1日事故らず帰宅できました。感謝します」と唱えながら、水を飲んで寝る。

2 commentaires:

yumeko a dit…

ただ一言。
 おもしろかった。笑いました。

minori a dit…

ま、まさか。。。笑いを誘ってしまったとは。。。
時間見つけて、遊びにきてくれて、ありがとう。
もう少し、がんばれ!