2007/05/02

気をつかう

 日本語を教えている友人の《あ》さんに「気をつかう」は「使う」と「遣う」のどちらだと思う?と訊ねられた。

《あ》さんは「気を使う」だと思っているけれども、友人に「遣うだよ」と指摘されて、気持ちが揺らいでいる。辞書も開いてみたらしい。「XXだと思う」と意見してあげるのは簡単なことだけれども、日本語を教えてずいぶん長い経験を持つ《あ》さんだから、「XXだと思う」と応えれば「どうして?」と訊き返されるに決まっている。
 わたしたちはいつもそういう学生たちと向かい合っているのだから、当然の姿勢だ。

 《あ》さんはすでに広辞苑で調べたそうなので、わたしはそれを避けて、『記者ハンドブック』(共同通信社1700円 ISBN4-7641-0381-8)というのを引っ張りだして来た。
 これはいつもお世話になっているヒントブックスから推薦され、「文章を書く人には必需品」と言われて数年前に購入した。本当に必需品だ。手元のものは第8版だが、すでに10版が出て、2004年に加えられた新語流行語も含め大きく改定され、最近ではパソコン内で簡単に使えるソフトまで出ているというので、そろそろ買い替えた方がいいかもしれない。

 さて「つかい/つかう」の項目をしらべる。

「使」【一般用語、主として動詞に】
上目を使う、お使いに行く、金の使い道、漢字・仮名を使う、気・心・神経を使う、こき使う、子供の使い、声色を使う、使い込みが発覚、使い勝手、使い走り、使い分け、人形を使う(ただし浄瑠璃では人形を遣う)、忍術使い、人使いが荒い、魔法使い、など。

「遣」【特別用語、主として名詞に】
息遣い、上目遣い、お遣い物、仮名遣い、金遣い、気遣い、気遣う、言葉遣い、無駄遣い、文字遣い、両刀遣い、

(注)「XXをつかう」は「使」
   「XXづかい」は「遣」
ただし、剣術・忍術・魔法・人づかいなどは慣用に従い「使」を使う。まぎらわしい時には平仮名書き。 

 ちゃんと考えたことがなかったので勉強になった。じつは思い込みと《ニュアンス》で「気を遣う」だと思っていたので、調べもせずに「気を遣うだと思うよ」と言っていたら大恥をかくところだった。
それにしても「気を使う」のと「気遣い」では漢字が違ってしまうとは、日本語って難しいなあ。

辞書の中にある「特別用語」だとか「例外」という項目は、恐ろしいブラックホールだ。。。


 昨日はスカイプで、先の《ヒントブックス》の山田さんと、「父兄会」や「子供」などなどということばについて、長々とお話しさせていただいた。
 この「父兄会」という言葉が嫌いだ。昔から不思議だった。小学生の時父は居たけれども父兄参観に出て来るのはいつも母だった。母が来れない時にはうちには「長男」が居ないから誰も来なかった。昭和50年代のわたしの小学生時代にはまだ家長制度が残っていた。それで今どきはきっとほかの言葉があるに違いないと思って、山田さんに訊いたら、いまでは「父母会」とか「保護者会」と言われるそうだ。それでも、片親の子や親が居ても親ではない人に預けられている子も居るので、「父母会」にも反発する人が多いらしい。
 フランスでは現在結婚する二組に一組は離婚するらしいので、小学校でも父母そろって「父母会」に出席する人は少ない。父母会に来て公衆の面前で喧嘩する父母もいる。
 「保護者」に決定かな?でも小学生には難しい言葉だから「ほごしゃ」にしたほうがいいのかな。そうすると「ほごしゃ」なにか不思議な単語になる。「ほごしゃ」よりも「保護者」の方が読んで字のごとくだからわかりやすいので、漢字で書いてふりがなを打とうか。

日本語って面白いなあ。
「記者ハンドブック」のほかに、井上ひさしが「魔法の辞書」と絶賛した講談社の『類語大辞典』というのも持っている。
帯には「それしかない」言葉がたちまち目の前に現れる!と書いてある。でも、まーだ使いこなしていない。

  もっと辞書を引かなければ!

魔法使いのような本屋さん ヒントブックスのサイトはこちら http://hintbooks.biz/home.html

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