2006/10/07

本の展示即売会

 ブックセールっていうんだろうか?本を展示して、その場で作家にサインしてもらったりする催しがあった。毎年ガヤックという町で行なわれる「本の見本市」に行った。子どもの本と、タルン県の作家の作品が多く紹介される見本市だ。

 バンドデシネという、フランス風マンガのコーナーには、30代以上の男性が多い。うれしそうにサインをしてもらっている。お父さんはそういう所で勝手にうろうろしているので(JPも)、お母さんは子どもたちを連れて、児童書コーナーに群れている。児童書コーナーのそばにはきれいな写真集や、お料理の本などが並んでいる。

 児童書コーナーに入った所で、折り紙の本を売っている女性がいた。その人が編集した本らしい。私の顔を見て「日本人ですか?折り紙できる?」っていうから、その人が折っているものを見ながら、「あんたより巧くできるよ」と思ったけど、「まあ、できます」と遠慮がちに言った。
 その人の折り紙の本はとっても簡単な、幼児向けとも言えるもので、3回か4回折ったら猫とか、船ができるというような作品が多かった。ちょうどわたしたちが訪れた時に『羽根が動く鳥』を折っているところだった。それを見たノエミが「私、つる折れる」といって、女性に紙をもらい、それがただのコピー用紙だったので、ちゃんと折り紙用の正方形に切りそろえて、折り始めた。
「ヘエー慣れてるのねえ」と感心している。
 「あなたも何かできるものがあったら、どうぞ」と言って、テーブルを開けようとしてくれたが、テーブルにはもう場所がなかったので、私は空中で折れるからテーブルは要らないと言って、子どもたちに場所を譲った。
 おばさんがノエミの折る鶴と、ゾエの折る《猫》に見とれている間、私は空中で折り紙をやっていた。見てないふりをして、実は横目でちらちらと私の指先をスパイしているおばさんである。でも、すぐに行方不明になったらしい。「裏返したところからわからなくなった」などと言っている。ノエミが鶴のお腹を膨らませている間、私もカタツムリの背中を膨らませた。机に置いて「エスカルゴだよ」と言ったら、感動していた。どんなもんだい。おばさんがそのカタツムリをちょうだい、研究するから、と言いたそうで言えない感じだったので、「持ってけドロボー、おつりは要らない」というようなえばった顔をして「あげます」と言った。横柄な日本人である。
 その場を去ろうと振り返ったら、見物人がわんさと後ろに並んでいて、何人かにお褒めのお言葉をいただいた。でも、そのおばさんの本にはカタツムリは出ていないので、おばさんの顔を潰してしまったかもしれない。大いに反省した。私のカタツムリを研究して、次回の本に載せていただきたいものだ。

 そのそばに大きな鶴の墨絵が見えた。とっても日本っぽい墨絵だった。
そこではHIROSHIMAというタイトルの絵本が売られていた。
 女の子がおばあちゃんに原爆体験を訊く、というストーリーで、墨絵と水彩画を上手に使ったきれいな絵本だった。原爆のせいで苦しい思いをした、というような絵本ではなくて、原爆が落ちる前の鶴と桜の思い出話だ。
 女の子がおばあさんの前で手を合わせて、挨拶しているページがあったので、これはきっと作家は日本人じゃないな、と思ったら、やっぱりフランス人だった。このポーズはタイ人かインド人かじゃないんでしょうか。日本人は「ゴメーン」とか「オネガーイ」というような時に手を合わせることがあっても、「おはようございます」と言いながら手を合わせないだろう。

 水彩画のページの右上には、各ページに新聞の紙面に載ったと思われる古い写真と解説もある。例えば「日本軍は真珠湾を闇討ちし、多くのアメリカ人を殺した」とか「日本はナチスドイツと手を組んだのだ」など。

 その作家は「あなたは日本人ですか」と訊いて、私の反応が恐ろしいかのような目で見たけれども、私が「このような本は珍しいから、子どもたちに買ってあげたい」と言ったら、目を細めてノエミを見た。そして、墨を使って絵本の中表紙にノエミの似顔絵を描いてくれた。目の辺りがとってもアジアティックで、主人公の女の子によく似ている。

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