2006/07/06

麦って、パンの味

 5日に引き続き、雨。しとしと降っているが、もっと降ってもらわないと困る。
 雨だったので何もしなかった。4日の夜のことでも書こう。

 4日は今月最初の火曜日で、お約束の農家でのピクニックだった。
 メリオッサンのお母さんに紹介された農場だ。
 広大な農地をフランス政府や、ヨーロッパ基金の援助を受けて開拓している。そこでは、学校を出たばかりの若い人や、長期失業者などを雇って、できるだけ大型機械を使わずに、無農薬の野菜を作っている。
 経営者は30代ぐらいの若いカップルで、農場にはパンを焼く手作りの釜や、JPが憧れている《水を使わない便所》などがあった。建設中の自宅は、なんと、わらの束で作ったブロックを木枠にはめ込んで建てているという。
 人の援助と、農作物の見直し、新しい経営の形、流通と販売の方法など、説明を受け、紹介された時にいいと思った通りだったので、その日のうちにこの農場の会員になった。

 フランスの大都市では、市営の小さな農場を借りて、月々の土地代を払い、自分たちの手で好きなように野菜や花を育てることのできるミニ農場がはやっているが、わたしたちのこの農場は、自分たちでは畑を耕したりしない。長期失業者、犯罪やアルコール依存症などから更生中の人など、社会復帰を目指す人たちが、広大な畑でありとあらゆる野菜を育て、それを町の広場で売るのだ。

 農場で働いていない会員は、広場で市が開かれる時に、テーブルを出すのを手伝ったり、市が終わったあとのお掃除をしたりする。なによりもわたしたちがやらなければならないことは、このような活動が行われていることを宣伝することと、農場で働かない代わりに、農場でできた野菜を買って食べること。

 7月から、毎週水曜日に野菜がいっぱいつまったカゴが,自宅に届けられる。今回ははじめてだったので、説明を受けて、ピクニックに参加したあと、その場で野菜を渡された。

第一回目は、
 さやいんげん 500グラム
 クルジェット 大きいのが4本
 タマネギ(白いタマネギで、青い葉っぱがついてる)5個
 シュー・ラヴ(日本では英語から訳してコール・ラビというらしい)2個
 巨大なサラダ菜 1個

 農場を案内してもらった。3月に、自分たちだけで掘った人工湖があったが、乾いていた。湖を掘った3月から、まとまった雨は降っていないから仕方ない。
 見渡すかぎりの麦畑をかき分けながら歩いた。農場の子どもが麦の穂を引っこ抜いて口に入れている。麦の殻を割って、中に入っている固い麦をかじっている。
 「おいしいの?」ときいたら、「パンの味がするよ」って言われた。
麦をかじったら、本当にパンの味がして、びっくりした。

 ゾエとわたしは麦をかじりながら、時々立ち止まって、足元に転がっている野生動物の糞を観察したり、足を踏み出すたびに一斉に飛び跳ねるバッタを追っ払ったりして遊んだ。ノエミは農場の男の子たちと走り回っている。JPは農場の女の人に熱心に説明をきいていた。 

 わらの束でできたピクニックテーブルを囲んでピクニックが始まった。《地球を守ろう》とか《差別をなくそう》とか、《遺伝子組み換え反対》などのTシャツを着ている人たちが何人もいて、サッカー応援の青いシャツに見慣れた目に、とても新鮮だった。持ち寄りのサラダやピザもベジタリアンだった。不健康に太っているのはわたしぐらいで、ちょっと反省した。わらのベンチは夏の薄いワンピースにはちくちくして痛かったので、次回からは、普段着のTシャツとズボンにする。気どらなくていいなんてうれしい。

 JPは、いきいきしている。となりに座った《差別をなくそう》のTシャツの人と、会話が弾んでいる。この前のPTAのピクニックがいかに場違いだったのかわかった。

 帰る時に積まれたタマゴパックを指差して、JPが訊ねる。
「うちのカゴには、タマゴが入ってなかったようだけど?」会員の一人が応える。
「タマゴは《野菜カゴ》には含まれないんですよ。XXさんのところでニワトリを買って、農場においとけば、毎週1パックもらえるの。XXさんのところに行って、よさそうなのを自分たちで選んで、農場においておけば、養ってもらえるよ。」
 ゾエとノエミが歓声を上げる。
「わたしたちのニワトリ!!名前をつけよう」
自分ちのニワトリが生んだタマゴを食べられるなんて。。。夢みたいだ。

風が激しく吹いて、空が暗くなってきた。遠くで雷が鳴り始め、だんだん近づいて来る。遠くの畑で雨が降り始めた様子だ。
 「いよいよ雨が降りそうなので、お開きね」
たいへんエコロジカルなピクニックだった。たくさん降りますようにと願いながら帰ってきた。

 それから二日間降った。まだ足りない。

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