2006/05/19

ようこそ、ここへ

 朝早く、トゥールーズから「あ」さんがやって来た。「あ」さんはパリから5時間ぐらい電車に揺られて、トゥールーズの娘さんの所にやって来た。パリではこの冬から下宿生活をしていた。
 普段の「あ」さんは、フランスから飛行機で24時間以上掛かる南の島に住んでいて、この陰気な冬を、寒いパリで過ごしていた。パリでの滞在期間が終わったので、もうすぐ南の島に帰ってしまう。

 カーモーの朝市をぜひ見たいと、トゥールーズから足を伸ばしてくれた「あ」さんを、我が家に案内する。もちろん朝市を通過して。町に突入する前に、銀行からお金をおろしてしまった時の「あ」さんは、そこから我が家まで食べ物屋さんが果てしなく続くことを、まだ現実視できていなかっただろう。

 今週でアスパラガスが終わりなので、私は友達の分も含めて6キロのアスパラガスを予約してから、駅に向かった。「あ」さんを連れて、朝市を一周する間に、両手に持ちきれないほどの食べ物を買ってしまった。「あ」さんは歩きながら新鮮なグリンピースを生で食べ始めている。私もお裾分けさせてもらったけれども、はじめて食べた生のグリンピースはとても甘くておいしかった。

 評判のパスタと、今週から並び始めたサクランボウは、トゥールーズの娘さんへのお土産にした。お昼のデザート用にも別に買ってもらった。うんちのこびりついている、生まれたての玉子と、しそみたいなすっぱい味の葉っぱ(オゼイユという)をかったので、お昼はオムレツにした。
 その他にも、「あ」さんはデザートが足りないかもしれないと言って、我が家の子どもたちのために、クルミのケーキを買ってくれた。

 日曜日のピクニックのために、チーズを15人分買わなければならず、それでずいぶん重くなってしまったが、お金を払って預けてある6キロのアスパラガスも、取りにいかなければならない。肉屋でハムを買うために並んでいたら、ある人が肉屋さんに「時差が9時間もあるところ」と言っていたので、「あ」さんが「おたくも、あっちから来たの?」と話しかけている。その人は、「あ」さんがこれから帰ろうとしている南の島に、遊びに行って戻って来たばかりだった。

 「いい所ですよねー。こんな暗いお空じゃなくてー」
「そうでしょう?」
「あ」さんも、はやく帰りたそうだった。

 久しぶりにあったお友達と、いろんな話をして、おいしいものを食べて、ちょっとお散歩して、駅で2人は黙りこくった。
「今、話したいことが浮かんで来たけど、話しはじめると電車に乗れなくなるから。。。またメール書くね」とお互いそれぐらいしか言えなかった。
 
 インターネットと飛行機のおかげで、世界は狭くなったけれども、やっぱりお友達の顔を見てやっと、本当に距離が縮まったような気がする。

 名残惜しいけれども、「あ」さんがはやく自分のベッドで深い眠りにつける日を、願っている。
実際に会えた友だちが「どうせまた会えるし」と言ってくれると、ほっとする。

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