2006/04/12

メリオッサン

 三軒となりのメリオッサンが火曜日の夜から泊まっている。
曲芸師のお父さんと、舞台照明係のお母さんの、それぞれの仕事の都合で、家に大人が居ないので、数日間預かることになった。中学生のお兄ちゃんは、別な友達の家に行ってしまった。

 メリオッサンは火曜日の夕方、我が家にやって来た。でも、私はレッスンのために出掛けたので、夕食から就寝までの子どもたちの世話はJPがした。私が夜遅くに帰って来たら、みんなもう寝てしまっていた。

 私は日本語レッスンのあと、大急ぎで学校の会議に出席したので、帰って来たのは23時半ごろだった。6月の学年末に行われるお祭りの話し合いで、私は折り紙のスタンドを引き受けることになっている。

 別なスタンドでは、リサイクルや、分別ゴミの講義などをゲーム仕立てにしたものを考えた人も居て、母親たちに大うけだった。

 その祭りの別な催しで、カードのついた風船をいくらかで子どもたちに売って、一斉に空に飛ばし、何か特別な仕掛けで、その風船たちがたどり着いた場所をキャッチできるというゲームを提案した人が居た。数年前にそれをやって、県外のどこか遠くの街で発見された風船があったらしい。 
 今回は、いちばん遠くまで飛んだ風船のカードに名前を残していた子供に、すごいものをプレゼントするというアイディアだ。なんと夢の広がること。

 景品がMP3だというので「私の方が欲しいわ」とか叫んでいる母親も居て、私はなんだか落ちつかなくなってしまった。この案に賛成の人は手を挙げてと言われ、みんなはおしゃべりしながらいい加減に手を挙げていたが、私がためらっているのを見て、会長さんに意見を求められた。

 「ほかのスタンドではゴムや紙を自然に捨ててはいけません、と講義を受けた子どもたちが、隣のスタンドに行って、こんどは大人に風船を買わされた上に、母親の手でそれを一斉に自然に放すんですか?そんなことしていいんですか?ノエミだったら絶対にひとこと言います。」

と言ってしまった。つい、言ってしまった。。。

 わいわい楽しくしていた母親会議が、一瞬にして凍りついてしまった。
すぐに「それはそうね」と言ってフォローしてくれた人が2.3人居たので、ちょっとは救われたが、そのアイディアを出しみんなに喜ばれて、胸を張っていた人に、一気に嫌われたのが肌で感じられた。隣同士でこそこそ話している人もいる。

 会長さんの「いずれにしても、そういうことをするには市役所の許可がいるから、できるかどうかわからないし。ハハハ。。。」という引きつった笑いとともに、別な話題に移った。

 次の日のお昼、メリオッサンとノエミに、学校のお祭りで風船を放すんだってと話した。実はメリオッサンの家庭はエコロジーな生活をしている上に、うちよりももっと厳しくって、動物を殺すの反対とかで、ベジタリアンだ。食堂でも、友達の家でも、出されるものに文句を言わないで何でも食べるので、うちに来たらメリオッサンはベジタリアンではなくなる。別に親もそこまでうるさく言わないが、今回泊まりに来て、この子供がフランス製の自然素材の服や靴下、安心マークの入った靴を履いているのを見た。ゴミ箱も「別けてるんでしょ?」と訊いて紙を捨てるゴミ箱を探してうろうろしている。与えられるおやつにも注意をしている様子が伺われた。表示を読んでいるのが、ノエミと全く同じだ。ノエミはいい友達を持ったなあ、と思った。

 メリオッサンとノエミは風船の話を聞いて、お互いに顔を合わせた。そして2人の小学生は「自然に優しいトイレットペーパーなどは聞いたことがあるけど、風船はゴムだから自然に捨てたらいけないよね」と言った。
 ノエミが「自然に捨てるための風船に、お金払うのなんか勿体ない」などと言っている。

 今のところ私たちは少数派で、うんちくばかり述べる「可愛げない」側だと思うが、ノエミ一人じゃないことがわかったので、この子たちの未来も捨てたもんじゃないと思った。
探したらあの学校にも、話せばわかる子供(とその親)がもっといるかもしれない。

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